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千葉地方裁判所 昭和57年(行ウ)11号 判決 1986年12月12日

原告 茂田郁次郎 外二名

被告 君津市久保土地区画整理組合

主文

一  原告茂田郁次郎、同茂田淳子の、被告が昭和五七年三月二三日付でなした別表三1記載の換地処分のうち別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分及び別表三2記載の換地処分の取消しを求める訴えを却下する。

二  原告らのその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主位的請求

(一) 原告茂田郁次郎(以下「原告郁次郎」という)、同茂田淳子(以下「原告淳子」という)

(1) 被告が昭和五七年三月二三日付で原告郁次郎、同原告淳子に対してなした別紙物件目録三ないし五記載の土地についての各換地指定処分を取消す。

(2) 被告が同日付でした別表三1記載の換地処分のうち別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分及び別表三2記載の換地処分を取消す。

(3) 被告が同日付で訴外高橋正司、同高橋文子(以下「訴外高橋両名」という)に対してなした別表四記載の換地指定処分を取消す。

(二) 原告郁次郎、同茂田晃(以下「原告晃」という)

被告が同日付で原告郁次郎、同晃に対してなした別紙物件目録一及び二記載の各土地についての各換地指定処分を取消す。

(三) 原告ら

訴訟費用は被告の負担とする。

2  予備的請求

(一) 原告郁次郎、同淳子

被告が同日付で原告郁次郎、同淳子に対してなした別表二記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取消す。

(二) 原告郁次郎、同晃

被告が同日付で原告郁次郎、同晃に対してなした別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取消す。

(三) 原告ら

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

(一) 主位的請求の趣旨(一)(2)、(3)の処分の取消しの訴えをいずれも却下する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

2  本案の答弁

(一) 原告らの請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告郁次郎と原告晃とは別紙物件目録一及び二記載の土地(以下「従前地七四一番一、同七四六番三」という)を、原告郁次郎と原告淳子とは別紙物件目録三ないし五記載の土地(以下「従前地七四四番一、同七四六番一、同七四六番二」という)を所有している。

その位置、形状は別紙図面一のとおりである。

2  被告は昭和五七年三月二三日付で次の換地処分をした。

(一) 原告郁次郎、同晃に対し別表一記載の換地処分

(二) 原告郁次郎、同淳子に対する別表二記載の換地処分

(三) 被告に対し別表三記載の換地処分

(四) 訴外高橋正司、同高橋文子に対し、別表四記載の換地処分

これらの換地の位置、形状は別紙図面二のとおりである。

3  別表一、二記載の換地処分は、以下の点で違法であり取消されるべきである。

(一) 土地区画整理法(以下単に「法」という)八九条の照応原則違反の点。

(1) 従前地七四一番一に対し君津市久保二丁目一番二〇(以下「換地一番二〇」という)を換地とする換地指定処分について

<1> 別紙図面五の一五―一街区(道路で囲まれた一団の土地・以下「一五―一街区」という)は各人の私有地の集合でありながら極めて広過ぎるため、通行、利用に不自由をきたすものであり、かかる換地設計は、そもそも違法である。

<2> 従前地七四一番一は間口が広かつたが、換地一番二〇は狭くなつた。

<3> 換地を割込むには、道路に直角の線を背割まで引いて換地の筆界とすることになつている(被告の換地細則一六条二項・以下単に「換地細則」という)が、換地一番二〇はそのようになつておらず違法である。

東側の背割線はカギ型(一部突き出る形)となつており、不整形である。

<4> 従前地七四一番一上には、五軒の建物があつたのに、換地一番二〇にはそのうち一軒半しか、のつていない。

(2) 従前地七四六番三に対し君津市久保二丁目一番一九(以下「換地一番一九」という)を換地とする換地指定処分について

従前地七四六番三は間口の長さの方が奥行の長さより長かつた

換地一番一九は間口を極めて極小とし、奥行を間口の十何倍の長さとしている。

(3) 従前地七四四番一に対し君津市久保二丁目一番八(以下「換地一番八」という)を換地とする換地指定処分について

<1> 従前地は東側及び東北側、西側が道路に面し、出入りのしやすい土地であつた。しかるに換地は東側のみ間口である。

<2> 従前地七四四番一に建物が六軒あつた(別紙図面四)このうち三軒が換地一番八にのつているのみで、あと三軒が換地にのつてない。

(4) 従前地七四六番一、同番二に対し君津市久保二丁目一番一八(以下「換地一番一八」という)を換地とする換地指定処分について

<1> 従前地七四六番一、同番二は更地で原告郁次郎と原告淳子の所有である。

換地一番一八には原告郁次郎所有の建物が建つている。

これは全く利用状況を無視した換地処分である。

このため、右原告両名は、建物の建つている二か所の土地と更地一か所をもつていたのが、本件の土地区画整理のため、将来の利用価値が最も高い更地一か所(建物を十軒建てようとしていた所)を無償収用されると同じこととなつてしまつたのである。

<2> 換地の画地は、道路に直角の線を背割線まで引いてするものである(換地細則一六条二項)のに右換地指定処分はそのようにしていない。

(二) 工事未了の違法

(1) 換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後においてすることができる(法一〇三条二項本文)。ここで工事とは、公共施設の新設又は変更の工事、宅地の区画形質変更の工事、法七六条違反工作物の移転除却工事、法七七条の建築物の移転除却工事である。

但し定款に別段の定がある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができる(法一〇三条二項但書)。被告定款六九条は、「この組合の換地処分は、法七七条の規定による建築物等の移転又は除却が完了した場合においては、その他の工事が完了しない以前においても、法一〇三条二項の規定により行うことができる」と規定している。

(2) 右の法七七条の規定による建築物の移転又は除却とは、本件に即して言えば、従前地七四一番一に存した建築物を換地一番二〇に、従前地七四四番一に存した建築物を換地一番八に移転することである。

しかるにこの移転はされていないので、別紙一、二記載の換地処分は、法一〇三条二項、定款六九条に違反した違法なものであり取消を免れない。

(三) 土地評価の違法について

(1) 評価は換地設計及び換地清算のために行われるが、被告は、以下のとおり原告らの宅地の評価を誤つたので、換地設計を誤り原告らに違法な換地を指定した。

<1> 原告らの従前地が面する道路の路線価を適正に付すべきなのに低く付している。

<2> 従前地七四一番一のうち二四三平方メートルは宅地であるのに、それより低い価格の畑と評価している。

<3> 従前地七四六番二は、整理前において二方公道に接していたのに、画地評価計算においてはこれを盲地(無道路地)としている。

このため、評価指数が違法に低くされている。

<4> 従前地七四一番一、従前地七四四番一は整理前の画地計算では鉄道接近係数を付して低く評価しているにもかかわらず、整理後の画地計算では鉄道接近距離においては全く変更がないのに、鉄道接近係数により換地価格の減額をしていないため減歩が違法に高くなつている。

(2) 被告は、前項のとおり原告らの宅地の評価を誤つたので換地清算金を低額とした。

4  別表三1記載の換地処分のうち別紙図面のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分及び別表三2記載の換地処分(保留地の設定)は、以下の点で違法でありかつ原告郁次郎、同淳子の別紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、取消されるべきである。

(一) 別表三1記載の保留地処分について

(1) 法違反ないし必要性のないこと

<1> 広大な保留地を設けるものであつて、違法である。

<2> 組合施行の保留地設定は、土地区画整理事業の施行の費用に充てるため、又は定款で定める目的のためすることができる(法九六条一項)。

ところが、費用に充てるためには、右のごとき広大な保留地を定める必要はなく、又、この保留地について、定款では定めていない。

(2) 別表三1記載の保留地の設定についての手続違反

<1> 別表三1記載の久保一丁目一番宅地九六六八・八〇平方メートル(保留地)は、当初の事業計画には予定されていなかつたのに右保留地が設定された。

<2> 右保留地の設定に当つて、法定の事業計画の変更の手続(法三九条)及び換地計画の変更手続がなされなければならない。

右変更手続には、総代会の議決を経なければならない(法三六条三項、三一条二号、七号)のに、かかる事実はない。

(二) 別表三2記載の保留地設定処分について

この保留地は付け保留地と称せられるべきもので、単独では、何んの利用価値のない間口最狭小、奥行超長大である。

これは、原告郁次郎、同淳子の従前地七四四番一、その換地一番八を削るためにのみ設定されたもので違法である。

5  訴外高橋両名に対する換地指定処分について

被告の訴外高橋両名に対する別表四記載の換地指定処分は、国鉄内房線の南側にあつた別紙物件目録六の土地(以下「従前地七六九番一」という)と同線の北にあつた同目録七の土地(以下「従前地七六九番九」という)とを集合換地とした上、飛び換地としたものであるが、これは照応の原則に違反し、この換地指定処分の違法が別表一、二記載の違法な換地処分を招来させ原告郁次郎、同淳子の別紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、取消されるべきである。

よつて原告郁次郎、同淳子は、主位的に従前地七四四番一、同七四六番一、同七四六番二の各土地についての各換地指定処分、別表三1記載の換地指定処分のうち別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分及び別表三2記載の換地処分並びに従前地七六九番一、同七六九番九の各土地についての各換地指定処分の各取消しを、予備的に別表二記載の各換地処分のうちの清算金処分の部分の取消しをそれぞれ求め、原告郁次郎、同晃は、主位的に従前地七四一番一、同七四六番三の各土地についての各換地指定処分の取消しを、予備的に別表一記載の各換地処分のうち清算金処分の部分の取消しをそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。但し被告の設立認可の公告がなされた昭和四五年一月二〇日及び仮換地指定の変更処分をした昭和四九年六月二〇日当時には、別紙物件目録一ないし五の各土地は、いずれも原告郁次郎が単独で所有していたものである。

2  同2の事実は認める。

3  同3は争う。

4  同4のうち、被告が原告ら主張のような保留地の設定をしたことは認めるが、その余は争う。

5  同5のうち、被告が訴外高橋両名に対し原告ら主張のような換地処分をしたことは認めるが、その余は争う。

三  被告の本案前の主張

1  主位的請求の趣旨(一)(3)の保留地設定処分の取消の訴について

(一) 原告郁次郎、同淳子は法九六条の規定による保留地の設定行為(換地処分)が抗告訴訟の対象となる行政処分であるとして、別表三1記載の保留地設定処分のうち、原告郁次郎、同淳子の従前の土地部分及び同2記載の保留地設定処分について、その取消を訴求している。

(二) しかし、保留地の設定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分ということができない。すなわち、抗告訴訟の対象となる行政処分というためには、行政庁の公権力の行使により直接国民の権利義務に変動を生ぜしめるような行政行為でなければならないところ、被告が法所定の手続により換地計画において保留地を定め、千葉県知事の認可をうけて、法一〇四条九項の規定により換地処分の公告の日である昭和五七年六月二五日の翌日保留地の所有権を取得したとしても、この保留地の設定自体により、直接、原告郁次郎、同淳子が共有していた従前の土地の所有権が侵害されたということはできない。従つて、これらの保留地の設定処分の取消を求める訴は不適法である。

(三) 別表三1記載の保留地設定処分について

原告郁次郎、同淳子が従前地七四六番一及び同番二の土地所有権を失つたのは、被告が換地計画において右原告両名が共有する右従前の土地に対して別紙三1記載の保留地を設定したことによるものではなく、被告が右従前の土地に対応する換地処分を行つたことによるものである。

このことは、仮に、右保留地設定処分が取り消されたとても、右原告両名に対する換地処分が取り消されない限り、右原告両名が右従前の土地の所有権を回復することがないことに照して明らかである。

そうして、原告郁次郎、同淳子は、本訴において、右従前の土地に対応する換地処分の取消を訴求しており、当該換地処分につき、取消判決が確定した場合には、原告郁次郎、同淳子は、従前地七四六番一及び同番二の土地所有権を回復することができるし、また、被告は、この取消判決に拘束される(行政事件訴訟法三二条、三三条)ので、右従前の土地になされた保留地設定処分を取消したうえ、改めて、右原告両名の従前の土地に対応する換地処分をしなければならないからである。

従つて、右原告両名が保留地の設定行為の取消しを併せて求めておかなければ、従前の土地の所有権を回復することが不能になるということはないものと思料する。よつて、右保留地設定処分の取消訴訟は不適法である。

(四) 別表三2記載の保留地設定処分について

また保留地の設定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分であるとしても、原告郁次郎、同淳子は、別紙三2記載の保留地の従前の土地の所有者ではないので、この保留地の設定により何等の権利、利益を害されていないから、当該保留地設定処分の取消を訴求する利益(原告適格)を有しない。

2  主位的請求の趣旨(一)(4)の訴外高橋両名に対する換地処分取消の訴について

原告郁次郎、同淳子は、被告が原告郁次郎、同淳子の従前の土地を訴外人に換地処分したことにより、従前の土地の所有権が侵害されたので、当該換地処分の取消を訴求する利益があると主張している。しかし、既に述べたとおり、右原告両名が従前の土地の所有権を失つたのは、被告が右原告両名の従前の土地に対応する換地処分を行つたことによるものであり、訴外人に対する換地処分に基づくものではない。仮に、訴外人の換地処分が取消しされたとしても、右原告両名の換地処分が取消しされない限り、右原告両名が従前の土地の所有権を回復するということはありえない。よつて、右原告両名は訴外人に対する換地処分の取消を訴求する利益を欠くので、右訴も不適法である。

四  被告の本案前の主張に対する原告らの反論

1  保留地設定処分について

(一) 保留地設定処分は、従前地が全く存在しないのに、この処分により新たに土地が被告のために創設されるものであるから、最も典型的な行政処分と言える。抗告訴訟の対象となる処分性は十分である。

(二) 別表三12の保留地は、原告郁次郎、同淳子の従前の土地の所在地であり、右原告両名に対する換地処分が取消されれば右原告両名に換地として交付されるべき土地である。

原告郁次郎、同淳子に対する換地処分は右保留地の所在地である原告郁次郎、同淳子の従前の土地を奪うことにある。換言すれば右原告両名に対する別表二記載の換地処分と別表三1記載の保留地設定処分とは表裏の関係にある。

しからば右原告両名に対する換地処分の取消と保留地処分の取消とを同時に求めなければ、原告らは本件取消訴訟の目的を達しえないのである。

(三) 被告はその結論の理由として、「取消判決の効力は第三者にも及ぶし、また、被告はこの取消判決に拘束される」とする。被告が取消判決に拘束されることは認めるが、取消判決がなされる頃には、保留地を譲り受けた第三者が建物(それも高層に近い)を建ておわつていよう。その場合にその第三者が右原告両名に対する換地処分の取消判決の効力を受けるとは理論上考えられないし、被告が現実に保留地設定処分及びその譲渡処分を取消すことは不可能である。

(四) よつて、現時点において、原告郁次郎、同淳子に対する換地処分の取消を求めると同時に保留地設定処分の取消を求めておく利益があり、右原告両名のみが原告適格がある。

2  訴外高橋両名に対する換地処分の取消について

(一) 本件別表四の換地処分の換地は、原告郁次郎、同淳子所有の従前地七四六番一の所在地であり、右原告両名に対する換地処分が取消されれば右原告両名に換地として交付されるべき土地である。

(二) 右原告両名に対する換地処分は右訴外高橋両名に対する換地処分の換地の所在地である右原告両名の従前の土地を奪うことにある。換言すれば右原告両名に対する従前地七四六番一についての換地処分と別表四記載の訴外高橋両名に対する換地処分とは表裏の関係にある。

(三) しからば右原告両名に対する換地処分の取消と訴外高橋両名に対する換地処分の取消とを同時に求めなければ、右原告両名は本件取消訴訟の目的を達しえないのである。

よつて、優に右原告両名には原告適格がある。

五  被告の主張

1  請求の原因3(一)の法八九条の照応の原則違反の主張について

(一) (1)の主張(従前の土地七四一番一、換地一番二〇)について

(1) <1>について

換地設計における街区、画地の規模、形状は施行地区における土地利用計画、建築物の整備計画、居住環境、区画道路網の配置等を総合的に勘案して定められるべきものである。また、組合施行の土地区画整理事業の費用は組合員である関係権利者の負担によるものであるから、資金計画(保留地)、公共減歩率についても配慮しなければならない。本件街区は整理前の建物の配置、地形等に照らして適正な規模であり、原告ら主張のような違法はない。

(2) <2>について

別紙図面一で明らかなとおり従前地七四一番一の西側全部が直接県道君津・大貫線(以下、単に「本件県道」ともいう)に接続していたわけではなく、その一部分には、いわゆる里道(県知事所管にかかる道路法の適用がない認定外道路、巾員一・二メートル)に接していた部分があつた。

そうして、この里道と県道との間には原告郁次郎、同晃共有の従前地七四六番三、田二〇平方メートルの土地が介在していた。従つて、従前地七四一番一の西側のうち、本件県道に接する部分は、二か所に分かれており、その間口は一三メートルと四メートルであつた。ところが、換地一番二〇は、別紙図面五のように、本件県道に接する間口が二三・六六八メートルであつて、里道もない。

(3) <3>について

換地細則一六条の規定は、換地の割込みにあたつての基本原則を定めたものである。すなわち、同条は被告組合が土地区画整理事業により道路を新設し、換地の割込みをする場合には、原則として、道路と直角に交わるように換地するということを規定したものであり、既設の県道、都市計画道路及び鉄道敷地等に面して換地の割込みをせざるをえないような特殊の事情があるような場合には右規定を適用することができない(換地細則三七条参照)。

法六条四項には、土地区画整理事業の施行につき、「公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合して定めなければならない」と規定されているので、公共施設である既設の県道、都市計画道路等が存在する場合には、これらの道路と直角に交わるように街区を構成することは極めて困難である。また、既設の県道、都市計画道路等は土地区画整理事業の施行地区の内外にわたる連続性のある道路であるから、被告の施行地区内に限り、道路の位置、形状を変更し、街区と直角に交わるようにするということも不可能である。このような事情がある場合には、これらの道路に接する当該街区内の各換地ができるだけ不整形にならないように配慮して換地の割込みを行い、もつて、関係権利者間の土地利用の公平をはかる必要があるので、換地細則一六条二項の規定をこのような場合には適用できないからである。

本件においても、換地一番二〇が接する本件県道は北方が国鉄内房線を横断(踏切)し、君津市坂田を経て国道一六号線に、また、南方が都市計画道路三・三・四号線に達する連続性がある道路であるから、この県道を一五―一街区と直角に交わるように変更することは極めて困難であり、また、仮に、換地一番二〇を県道と直角になるように割込みをすれば、原告ら以外の他の権利者の換地がすべて不整形な画地となり、利用価値が減少することになる。

また、乙第三号証(換地図)で明らかなとおり、本件県道に沿つた街区は、いずれも換地線が道路と直角に交わつていないから、被告が原告らに対してのみ著しく不利益な換地を行つたということもできない。

次に、原告らは、本件(一)の換地につき、東側の背割線がカギ型となつており、仮換地と異なつて、不整形となつていると主張している。

しかし、これは確定測量による誤差修正によるものである。換地一番二〇の東側及び南側の各隣地は、いずれも原告らの換地(仮換地指定時には、原告郁次郎が従前の土地を単独所有していたものである。)であるから、原告らはこれらの換地を一体的に利用することができる。従つて、確定測量により換地一番二〇の東側背割線がカギ型になつたとしても、これにより利用価値が低くなつたということはできない。

何故なら、法八九条の照応の原則は、従前の土地各筆と換地各筆の関係を個別的ではなく、総合的に勘案した場合において、従前の土地と換地が大体同一条件にあると認められることをもつて足ると解されているからである。

そうして、原告郁次郎は、後述のとおり、仮換地指定をうけた後、従前の土地を共有となし、妻及び長男に共有持分の一部を贈与しているのであるが、仮換地指定後になされた、このような権利の変動は照応の原則の適用上、配慮する必要がないものと思料する。

(4) <4>について

被告は、原告らの従前の土地七四六番一及び同番二の二筆の換地を換地一番二〇及び同番一九の従前の土地の位置に割込みをすることになつたので、原告郁次郎に対して昭和四九年六月、仮換地の変更指定をしたとき、同原告所有にかかる一二棟の建物のうち七棟を被告の費用で移転することを計画し、昭和四九年以来、再三、再四にわたり同原告に対し建物等移転のため家屋立入調査の協力を申し入れてきたが、同原告はこれに応じなかつた。そうして、同原告は、最終的に昭和五四年六月四日の内容証明郵便による文書をもつて貸家の移転により甚しく経済的価値を減少すること、建物を移転した場合、利用価値が低下し、収入が得られなくなるおそれがあり、生活収入の減少になるという理由で建物の移転を拒絶してきたのである。そのため、被告は建物の移転計画を取り止めざるを得なかつた。

このように被告が組合の負担において建物の移転を申し入れたにも拘わらず、原告郁次郎はこれを拒絶しておきながら、本訴において、建物の移転がされていないから換地一番二〇の換地指定処分が違法であると主張するのは禁反言の原則(信義則)に反するので許されない。

(二) (2)の主張(従前地七四六番三換地一番一九)について

(一)(2)で述べたように従前地七四六番三は、里道と県道とに挾まれた二〇平方メートルの土地である。従つて、被告は、従前地七四六番三を従前地七四一番一と一体的に利用してきたものとして、従前の土地の評価計算をしており、本件換地処分も換地一番二〇及び同番一九が一体的に利用されるものとして行つているのである。

このように換地一番一九は、換地一番二〇と一体的に利用することにより客観的価値が増進することが認められるのであるから、原告らの右主張も失当である。

(三) (3)の主張(従前地七四四番一換地一番八)について

(1) <1>について

別紙図面一で明らかなとおり従前地七四四番一の東側及び西側の道路というのは、いわゆる里道であり、その巾員は一・二メートルに過ぎなかつたのである。そうして、同土地の東北側一三・五メートルが巾員六メートルの市道に面していたに過ぎない。

ところが、換地一番八は、東側一五・五二メートルが区画整理道路に面することになり、また、形状も整形化したので、利用条件が従前の土地よりも増進している。

(2) <2>について

既に(一)(4)で述べたように被告が建物の移転を申し入れたにも拘わらず、原告郁次郎はこれを拒絶していたのであるから、被告に対して建物の移転費用相当額の損失補償を求めるのであれば格別、右換地処分の違法事由として主張するのは禁反言の原則(信義則)に反するので許されないといわなければならない。

(四) (4)の主張(従前地七四六番一、同番二換地一番一八)について

(1) <1>について

既に(一)(4)で述べたとおり、換地一番一八は原告ら所有の換地一番二〇及び同番一九の従前の土地に割込みすることになつていたので、被告は、昭和四九年六月、仮換地指定の変更処分の際、原告郁次郎がこれらの従前の土地に所有する建物四棟を原告郁次郎が仮換地指定をうけた土地(当時、原告郁次郎の単独所有。換地一番二〇、同番一九、同番八)上に移転する計画をたて、移転工事の方法、これに必要な諸費用の算定などのため、右建物に立入調査するために協力を申し入れたが、原告郁次郎より前述のとおり拒絶されたので、やむをえず、建物の移転を中止せざるを得なかつたのである。ちなみに、被告は原告らが建物の移転を承諾されるのであれば、何時でも建物を移転する用意がある。

右に述べたとおり、被告が換地一番一八を更地にできなかつたのは、原告郁次郎が建物の移転を拒否したことによるのであるから、右建物の存在は換地一番一八の違法事由にはならないものと解するのが相当である。

蓋し、前述のとおり原告郁次郎は被告から建物移転の申入れをうけた後である昭和五四年八月三日、従前地七四一番一及び同七四六番三の共有持分五五分の一を長男である原告晃に、また、同日、従前地七四六番一及び同七四六番二の共有持分一〇〇分の一を妻である原告淳子に、更に、昭和五四年五月三〇日、従前地七四四番一の共有持分六〇分の一を原告淳子に、いずれも贈与を原因として所有権移転登記を経由しているのであるが、これらの所為は、被告の建物の移転を困難にさせる意図でなされたものとうかがわれるので、共有持分権の贈与をうけた原告淳子が右建物の存在を換地一番一八の換地指定処分の違法事由として主張するのは権利の濫用になるものと思料するからである。

また、照応考慮の基準時については土地区画整理事業の工事開始時の状況によるべきであるから、施行者が仮換地指定後の権利の変動につき考慮を払うことなく、換地処分をしたとしても、照応の原則には違反しないと解すべきである。区画、形質の変更が伴う土地区画整理事業において、仮換地指定後の権利変動をすべて考慮しなければならないとすれば、事業の執行が不可能になるからである。

(2) <2>について

また、原告らは、換地一番一八の換地線が道路と直角ではないと主張しているが、既に(一)(3)において述べたと同様の理由により原告らの主張は失当である。

2  工事未了の違法の主張について

(一) 法一〇三条二項の規定は、土地区画整理事業の工事が完了していないのに換地処分をした場合には土地区画整理事業の目的である宅地の利用増進があつたことが客観的に明確にならないこと、また工事が完了していなければ換地が確定できないし仮に確定できても現実に使用することができないので一挙に権利関係を確定するという換地処分の目的に反し権利関係や現実の使用に錯綜混乱を生ずるため、換地処分は工事が完了しなければ原則としてすることができない旨を規定したものである。

ところが、本件においては、被告の施行地区内の区画形質の変更工事及び公共施設の整備改善の工事はすべて完了していて宅地としての利用増進がはかられており、また換地は確定測量に基づくものでその境界は明確であるから、本件換地処分により権利関係の確定及び現実の使用に錯綜混乱が生ずることはなかつた。よつてそもそも本件の換地処分が法一〇三条二項に反することはない。

(二) 原告らは、従前地七四一番一に所在する建物をその換地一番八に移転すべきなのに被告がこれを移転していないので工事が完了していないと主張しているが、既に1(一)(4)で述べたとおり、被告は従前地七四一番一及び七四四番一上に存する建物の移転計画を樹立したが、原告郁次郎から、利用価値の低下を理由として文書をもつて建物の移転を拒絶されたので、移転ができなかつたのである。

法七七条の規定は、仮換地上に第三者の建物がある場合には当該仮換地の指定をうけた者が使用収益をすることができないので土地区画整理事業の目的達成のために施行者に建物の移転除去につき直接施行を認めた規定であるから、仮換地上の建物が仮換地指定をうけた者自身の所有であり建物の移転を希望していないときには、施行者が強制力を行使してこれを移転する必要はない。従つて原告らの主張にかかる建物は、法七七条の規定により移転を必要とする建物に該当しないから、被告の工事が完了していないということはできない。

(三) また、原告らは換地一番二〇の従前の土地である従前地七四一番一の土地上にある各建物も法七七条の規定により換地一番二〇に移転すべきであつたと主張しているが、右換地は原告ら所有の従前の土地が大部分を占めているので現地換地に等しく、照応考慮の基準時である工事開始当時、右換地上の建物は、原告郁次郎自身の所有であつた。そして前記のとおり、原告郁次郎は利用価値の低下を理由として建物の移転を拒絶していたのであるから、被告には建物を移転する義務はなかつた。従つて右建物は、法七七条の規定により移転を必要とする建物には該当しない。

3  請求の原因3(三)の土地評価の違法について

(一) (1)の主張について

(1) <1>について

土地区画整理前後の路線価の算定は適正であつて、被告が原告らの従前の土地の路線価を低く定めた事実はない。

(2) <2>について

原告郁次郎、同晃の従前の土地七四一番一の土地は、かつて、地目が田であり、昭和四三年頃、原告郁次郎が埋立て、建物を建てたのであるが、同原告は、当時、七四一番一の土地全部にわたり整地をしたのではなく、建物を建てるべき部分を盛り土し、整地をしたが、その余は埋立て、整地をしていなかつたのである。

被告は、整理前の土地評価を行うため現地調査を行つたが、測量した結果、二四三平方メートルが盛り土されておらず、従つて、整地もされていなかつたので、換地細則三三条の規定により、右二四三平方メートルを除いたその余の土地につき評価の一〇パーセント増しをしたものである。

(3) <3>について

七四六番一、同番二の土地は一体的に土地利用できる状況にあつたので、二筆を一画地として評価計算をしており、原告主張のように盲地として評価をしてはいない。

(4) <4>について

換地細則三四条二項、別表一二号による鉄道修正は一画地毎の従前の土地の評価計算に用いられたものである。整理後の換地については、鉄道接近係数を路線価に組み入れて減額している。

(二) (2)の主張について

従前の土地及び換地の評価は適法なので、換地清算金も適法である。

4  請求の原因4(保留地設定処分)の違法事由

(一) 別表三1記載の保留地設定処分について

(1) 法違反ないし必要性を欠く旨の主張について

<1> 被告は、この保留地の設定について、法九六条一項、定款(乙第一八号証)七条の規定により設定したものであるから、原告郁次郎、同淳子の法律違反の主張は理由がない。

<2> 被告が保留地の位置を一街区にとつたのは、次に述べるとおり、地域発展の核となる店輔が建てられるような商業保留地を設けるべきであるという総代会の総意によるものである。

被告の施行地区は、国鉄君津駅に近接していたので、同駅を中心として自然発生的に昔ながらの店輔が道路に沿つて存在していたが、中心となるべき商店街が存在しなかつたので、被告の当初の事業計画においては、既存の店輔、住宅を避けて道路を新設、変更するという設計に過ぎなかつた。

しかし、君津市は、新日本製鉄君津製鉄所の進出などにより、急激に人口が伸びて都市化がすすみ、昭和四五年九月、五か町村の合併により人口七万を数えるようになり、翌昭和四六年九月一日市政が施行された。そうして、国鉄君津駅も従来の位置より約二〇〇メートル国鉄青堀駅の方向に移動することが確定的となり、この新駅の北側を施行地区とする坂田土地区画整理組合では駅に近接して大型店輔を誘致するための商業保留地の設定が行なわれることになつた。

ところで、被告は国鉄君津駅と君津市役所とを結ぶ地域を施行地区としているところ、駅付近が都市計画法上の商業地域に指定されることが明らかとなり、また、先に述べたとおり新日本製鉄君津製鉄所の進出により急速に人口が伸びたにも拘わらず、君津市には中心となるべき商店街が存在しなかつたため、君津商工会の昭和四五年一〇月の調査によれば、君津市民の購買力の約五三パーセントが木更津市の商業圏に吸引されているという状況にあつたので、原告らを除く被告の土地所有者及び借地権者の殆んど全員が施行地区内の商業地域に君津市民の購買力を吸引するような中心的な商店街となるべき商業保留地を設けるべきであるという構想が盛り上がり、後述のとおり、法所定の事業計画変更の手続を経て、別表三1記載の保留地の設定がなされたものである。

被告は、右保留地を設けたことにより、小面積の保留地を設けて、この処分のために長期間をかけて売却する場合と対比し、一括して売却することが可能となり、事業資金の資金繰りの円滑化を図ることができたし、また、保留地の売却に要する経費の節減を図ることができたのである。

そうして、この保留地の設定により住宅、店輔の移転が伴つたが、この移転補償費に充てるため、君津市から二億円の助成金の支出をうけているので、これにより組合員の負担が加重されたということもない。

(2) 手続違反の主張について

別表三1記載の保留地の設定にあたつては、昭和四七年一二月六日、事業計画変更に関する総代会の議決を経て、昭和四八年二月一二日、千葉県知事より事業計画変更の認可をうけた。そして、昭和四八年三月三〇日、本件保留地の設定につき、総代会の議決をうけているものである。

(二) 別表三2の保留地設定処分について

被告が右保留地を設けたのは次に述べるような理由によるものであり、原告郁次郎、同淳子の主張は理由がない。

すなわち、被告は昭和四九年六月二〇日原告郁次郎の仮換地指定(当時は原告郁次郎が従前の土地を単独所有)の変更処分をしたのであるが、これと同時に前記のとおり原告郁次郎所有の建物一二棟のうち七棟を移転する計画をたてた。

被告は右建物の移転にあたり、従前の建物と建物の間隔が約二メートルであるので、同様の間隔で建物が移転できるようにするためには、一番一九、同番二〇及び同番八では面積が不足するので、原告らの利益のために付け保留地を設けたものである。

5  請求の原因5(訴外高橋両名に対する換地処分)の違法事由について

右訴外人の従前の土地が二筆となつたのは、かつて、国鉄用地に買収されたため、分割されたものであり、国鉄線北側の土地は三八平方メートル(一一坪四九)の過少宅地であり、もし、被告が分割して換地することになれば、同土地の換地は画地基準に達しないことになるので、右訴外人所有にかかる国鉄線南側の従前の土地とまとめて換地したものである。

また、右訴外人の換地が飛び換地となつたのは、前述のとおり集合保留地が設けられたので、原位置及びその付近に換地することができなかつたので、右集合保留地の南側に目白押しに飛び換地をせざるを得なかつたものである。

第三証拠<省略>

理由

第一被告の本案前の主張について

一  主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地設定処分の取消しの訴えについて

土地区画整理法は、保留地については、換地計画において土地区画整理事業の施行の費用に充てることなどの目的のために保留地を設けることができること(法九六条一項、二項)、換地処分がなされた旨の公告があつた日の翌日に土地区画整理事業の施行者が保留地を取得すること(法一〇四条九項)を定めているのみである。そして法一〇三条一項が「換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするもの」と定めていることから考えて、換地処分とは、個々の換地を受ける者に対して従前の土地に対応する換地及び清算金額を通知することと解されるが、保留地の設定については特定の者に対して通知することを同法は予定していないのである。従つてたとえ個別的換地処分があつた旨の公告がなされた翌日に保留地の所有権が施行者に移転するという効果が発生するとしても、そのことによつて法一〇三条一項の個別的換地処分と同等なものとしての「保留地設定処分」が存在することにはならないというべきである。

従つてその余について判断するまでもなく、原告郁次郎、同淳子の別表三1記載の保留地設定処分のうち別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分及び別表三2記載の保留地設定処分の取消を求める訴えは不適法であるからこれを却下する。

二  主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外高橋両名に対する換地指定処分の取消しの訴えについて

成立に争いのない乙第二号証及び弁論の全趣旨によれば、別表四の換地欄記載の換地(以下「換地一二番四」という)のうち別紙図面三のホ、ヘ、ト、チ、ホの各点を順次直線で結んだ範囲の土地(以下「本件係争地」という)は、原告郁次郎及び同淳子が所有する従前地七四六番一が所在していた土地であることが認められる。従つて本件係争地は、訴外高橋両名に換地処分されなければ、原告郁次郎及び淳子に換地されるべきものであるから、従前地七四六番一及び同番二に対し換地一番一八を指定する換地処分と右高橋両名に対する換地処分とは表裏の関係にあるものということができる。このような場合、原告郁次郎及び同淳子は従前地七四六番一及び同番二についての換地指定処分の取消しを求めうるのみならず、訴外高橋両名に対する別表四記載の換地処分の取消しをも求めうると解すべきである。

第二主位的請求の趣旨について

一  請求原因1、2の事実については、当事者間に争いがない。

二  法八九条一項の照応原則違反の主張について

1  法八九条一項は、換地を指定する基準として「換地及び従前の土地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない」旨規定しているところ、土地区画整理においては、その本質上土地の区画、形質に変更を生じるものであるし、また道路、公園等公共施設の新設を伴うことが通常であるため、すべての条件が従前の土地に照応するように換地を定めることは、技術的にも殆んど不可能であるから、右規定は、各換地がおおむね公平に定められるべきことを規定したものと解するのが相当である。従つて前記諸要素を総合的に勘案してもなお従前の土地と著しく条件が異なり、かつ近隣の土地所有者に比較して著しく不利益な処分をしたものであつて、そのことにつき合理的な事由を欠如する場合でない限り、当該換地指定処分は違法とはならないものと解すべきである。

2  原告らは、一五―一街区は私人の集合地としては広すぎるのでこのような換地設計はそもそも違法であると主張するので、この点につき検討する。

成立に争いのない乙第一号証の二、第三号証によれば、一五―一街区は長辺、奥行とも約七五メートルであつて被告組合の施行区域内の標準的な街区に比べて奥行が長いことが認められる。

しかしながら前掲乙第一号証の二、第三号証、成立に争いのない乙第四号証、第六号証、証人平川雄之の証言によれば、一五―一街区は北を国鉄内房線、西を本件県道によつて画されているという特殊性があり、また仮に別紙図面五の一六街区と一七街区の間の区画整理道路をそのまま延長して一五―一街区の間に設けたとするなら道路用地として四〇〇平方メートル以上の土地が必要となり、右の増加は被告が路線価式土地評価法と地積式土地評価法の折衷方式を採用しているので地先の土地所有者である原告らのみが負担するのではなく施行地区内の関係者全員の負担となることが認められる。さらに右道路を一五―一街区に設けると街区内の画地がしわ寄せを受けて原告らの画地以外の面積の少ない画地を他の街区に飛び換地せざるを得ないことにもなり、原告ら以外の画地の権利者にとつて照応の原則に反する結果となるおそれがある。

従つて右のような事情のある一五―一街区においては、奥行の長い設計をしたとしてもそのこと自体が照応の原則に反して違法と評価すべきではなく、また後記のとおり一五―一街区の大きさを維持したままでも原告ら所有の各従前地とそれに対する各換地を比較した場合その利用状況が悪化したことは認められないので、一五―一街区の換地設計は適法である。

3  そこでさらに進んで原告らの個々の従前地と換地とが照応しているかにつき検討する。

(一) 従前地七四一番、換地一番二〇について

(1) 前掲乙第一号証の二、成立に争いのない乙第一号証の一、第二号証によれば被告の主張1(一)(2)記載の事実が認められる。

右事実によれば、道路法の適用がある公道に接する長さの比較においては、換地一番二〇の方が長いことになるので利用価値が増進していると考えられ、また前掲乙第六号証、証人平川雄之の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第二一号証によれば、従前地七四一番一が接していた里道に関して角地計算がなされ従前地の評価が高くなつていることが認められるので、里道に接していることも換地一番二〇の地積に反映されていると言うことができ、この点から考えても土地区画整理前後の間口の比較の点においては照応の原則違反はない。

(2) 前掲乙第六号証によれば、換地細則一六条二項には換地を割込むには道路に直角の線を背割まで引いて換地の筆界とする旨規定していることが認められるが、右条項は換地の割込みにあたつての基本原則を定めたものであり、換地細則三七条によれば特殊の事情が存する場合には換地細則一六条二項に従わないこともできると解されるところ、前掲乙第二、第三、第四号証、証人平川雄之の証言によれば、本件県道は、土地区画整理以前から同じ位置にあつた県道の幅員を広げたものであつて、北方が国鉄内房線を横断し君津市内を至て国道一六号線に達し、また南方は都市計画道路三・三・四号線に達する連続性のある道路であることが認められ、このような既設の県道を一五―一街区に直角に交わるように変更することは極めて困難であり、法六条四項の「事業計画は公共施設その他の施設又は土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合して定めなければならない」との規定にも反することになる。

そして前掲乙第三号証によれば、本件県道に沿う街区については、一五―一街区の北側にある二街区を除いては、いずれの街区も本件県道に対し換地の割込みが直角になつていないこと、二街区は面積も小さく東側に県道と平行の道路が作られたので直角の割込みが可能であつたが、一五―一街区は面積及び形状からみて直角の割込みが極めて困難であることが認められるので、換地一番二〇の換地の割込みが本件県道に直交していないとしても換地細則には反せず、照応の原則に違反しない。

(3) 前掲乙第一号証の二、第二号証、原告茂田淳子本人尋問の結果によれば、換地一番二〇の背割線が別紙図面五のとおりカギ型になつていること、仮換地指定の際には右背割線は真直ぐになつていたこと、換地の背割線は権利者の利用の便宜から直線にするのが原則であること、以上の事実が認められる。

しかしこれに対し、証人平川雄之の証言によれば、仮換地のときに真直ぐであつた背割線がカギ型になつた理由は、確定測量の際に仮換地指定地の面積の測量誤差が発見されて換地一番八の面積が増え換地一番二〇の面積が減つたために換地一番八の西側が換地一番二〇の一部に食い込むような形になつた点にあることが認められる。

そして照応の原則は個々の土地ごとに個別的に満されるのが最も望ましいことであるが、土地区画整理事業による利益不利益の結果は組合員単位で生じるものであること、土地区画整理事業は分散・錯綜した各土地を総合整理するものであること等を考慮すれば、同一人が複数の土地を所有している場合にはこれらの土地を総合し全体として均衡を保つことも許されると解する。従つて換地一番二〇の背割線がカギ型になつていたとしても、食い込んでいる換地一番八と所有者が同一であるかもしくは同一とみなしうる場合であれば、両換地を一体的に利用できるから利用状況が悪化することにはならないと考えられ、後記のとおり従前地七四一番(換地一番二〇)と従前地七四四番一(換地一番八)は、照応の原則の適用にあたつては同一人の所有に属するものと同視して取り扱うことができると解すべきなので、背割線をカギ型にせざるを得ない合理的な理由のある本件においては右背割線の形状は違法ではない。

(4) 前掲乙第二号証、成立に争いのない乙第五号証、原告茂田淳子本人尋問の結果によれば、従前地七四一番一と同七四四番一上には別紙図面四のとおり原告郁次郎所有の建物が合計一二棟あり、そのうち五棟が従前地七四一番一上に、六棟が同七四四番一上に、一棟が両土地の境界線上に建つていたが、従前地七四一番一の東側に建つていた建物のうち一棟半しか右従前地の換地一番二〇の上にはのらず、従前地七四四番一上の六棟の建物のうち三棟半しか右従前地の換地一番八の上にはのらないことが認められる。

たしかに照応の原則からは従前地上の既存の建物を移転しないように換地を指定することが理想であるが、土地区画整理においてはすべての土地について建物の移転をしないで済ますことはできず、前掲乙第五号証、証人平川雄之の証言、被告代表者佐久間惣治本人尋問の結果によれば、被告は原告郁次郎所有の右一二棟の建物のうち七棟を被告の費用で乙第五号証のとおりに移転する計画を立てたことが認められ、右計画によれば従前地七四一番一と同七四四番一上における右一二棟の建物の利用と、換地一番二〇と同一番八上での移転後の建物の利用とで利用価値の点で著しい差異は認められない。そしてこのような換地一番二〇と同一番八を一体として利用することを前提とした建物移転計画は、従前地七四一番一と同七四四番一との境界線上に建物が一棟建つていたというように両従前地が一体として利用されていた点からも是認できるものである。

さらに従前地七四一番一と同七四四番一の所有関係について検討するに、成立に争いのない乙第九号証の一、三、証人平川雄之の証言によれば、従前地七四一番一の持分五五分の一が原告晃の、従前地七四四番一の持分六〇分の一が原告淳子のそれぞれ所有に属しているが、右持分は、いずれも仮換地指定処分後である昭和五四年八月一日(従前地七四一番一)と同年四月一五日(従前地七四四番一)に原告郁次郎から贈与されたものであることが認められる。従前地と換地が照応しているかを判定する基準時は原則として区画整理事業の工事開始時であるが、工事開始後に区画整理事業の進捗と無関係の事情によつて従前地と換地が照応しなくなつた場合には右事情を無視して換地処分をすることは許されないと解されるところ、区画整理事業開始時において同一人の所有地であつた数筆の土地がその後別々の所有者に帰属するに至つた場合は区画整理の進捗と無関係の事情ということができる。しかしながら本件の場合のように従前地七四一番一、同七四四番一の両方の所有者である原告郁次郎が、仮換地指定処分後に従前地七四一番一の持分五五分の一を子である原告晃に、同七四四番一の持分六〇分の一を妻である原告淳子にそれぞれ贈与し、残りの持分はすべて原告郁次郎に属しているという場合には、照応の原則の適用上は、右両従前地が同一人の所有に属するものと同視できると解する。

以上の理由から従前地七四一番一上の五棟の建物が換地一番二〇上には一棟半しかのらなくても照応の原則に違反しないと言うべきである。

(二) 従前地七四六番三、換地一番一九について

前掲乙第一、第二号証、成立に争いのない乙第九号証の二によれば、従前地七四六番三は、本件県道と里道に挾まれた二〇平方メートルの土地でありそれのみでは利用することができなかつたが、換地一番一九は間口が約〇・五六メートル、奥行が約二九メートルと間口に較べ奥行が長いものの換地一番二〇、同一番一八と一体的に利用できることが認められ、右事実によれば、土地区画整理の前後で利用価値に差異はなく、換地の奥行が長いことが照応の原則に反することにはならない。

(三) 従前地七四四番一、換地一番八について

(1) 前掲乙第一号証の一、二、第二号証によれば、被告の主張1(三)(1)記載の事実が認められ、右事実によれば公道に接する長さでは換地一番八の方が長いので利用価値が増進したと考えられ、前掲乙第六、第二一号証、証人平川雄之の証言によれば里道については、角地計算、背面道路加算の形で換地の地積に加算されていることが認められるので、土地区画整理前後の間口の比較の点においては照応の原則違反はない。

(2) 前掲乙第二号証によれば、従前地七四四番一上には原告郁次郎所有の建物が六棟あつたが換地一番八上には三棟半しかのらないことが認められるが、前記のとおり土地区画整理においては建物をまつたく移動せずに換地を行うことは技術的に困難であり、また乙第五号証のとおりに建物を移転すれば従前地と換地の利用の価値にはそれほど違いはないので換地一番八上に建物が三棟半しかのらないことをもつて照応の原則に反することはない。

(四) 従前地七四六番一、同七四六番二、換地一番一八について

(1) 前掲乙第二号証によれば従前地七四六番一、同七四六番二は更地であつたが、換地一番一八上には原告郁次郎所有の建物が建つていることが認められる。しかし前掲乙第五号証、成立に争いのない乙第七号証の一、二、証人平川雄之の証言、被告代表者佐久間惣治本人尋問の結果によれば、被告は昭和四九年六月に原告郁次郎に仮換地の変更指定をした後、前記のとおり原告郁次郎所有の建物のうち七棟を移転する計画を立て、昭和四九年から同五四年まで被告組合の磯貝副理事長と坂本副理事長が原告郁次郎と右計画に基づく建物移転の交渉をしていたが、原告郁次郎の同意を得られなかつたこと、同五四年四月二四日以降は文書で建物移転調査立入り通知を数回出したが、原告郁次郎が同年六月四日付内容証明郵便による文書をもつて移転を拒絶したため、被告は建物移転計画を取り止めたものの、被告には現在でも原告らの承諾があれば右移転計画を実行に移す用意があること以上の事実が認められ、右認定に反する原告茂田淳子本人尋問の供述は前記各証拠に照らし信用し難い。よつて右事情の下では従前地と換地が照応しているかの判定にあたつては、乙第五号証のとおりに建物が移転されているものと判断すべきである。そして成立に争いのない乙第九号証の四によれば、従前地七四六番一、同七四六番二の持分各一〇〇分の一が原告淳子の所有に属しているが、その余は原告郁次郎が所有していることが認められるので、換地一番一八上に原告郁次郎所有の建物が立つているままでも右換地の利用に支障があるわけではなく、よつて換地一番一八には照応の原則違反はない。

(2) 換地一番一八の割込みが本件県道に対し直角になつていないとしても、前記(一)(2)のとおりそのことによつて照応の原則に違反することにはならない。

三  工事未了の違法の主張について

法一〇三条二項は、土地区画整理事業の工事が完了していないのに換地処分がなされると従前の土地に照応した換地を確定することができず、また仮に換地自体確定しうるものであつても工事未了のために使用できないといつた事態を避けるために、換地処分は原則として工事が完了した後でなければなしえないとしたものである。そして法一〇三条二項但書は組合の定款に特段の定めがある場合には工事完了以前においても換地処分ができる旨規定し、成立に争いのない乙第一八号証によれば被告の定款六九条は法七七条の規定による建築物等の移転又は除去が完了した場合においてはその他の工事が完了しない以前でも換地処分ができる旨規定していることが認められる。

法七七条の規定は、仮換地上に第三者の建物がある場合には当該仮換地の指定を受けた者が使用収益をすることができないので、土地区画整理事業の目的達成のため施行者に建物の移転除去の直接施行を認めた規定であると解されるところ、従前地七四一番一上の各建物は原告郁次郎の所有に属し、従前地七四一番一、同七四六番三の持分各五五分の一、同七四四番一の持分六〇分の一、同七四六番一、同七四六番二の持分各一〇〇分の一は原告郁次郎が仮換地指定処分後に贈与したものであつてその余の持分はすべて同人が所有しており、そのうえ前記のとおり原告郁次郎は被告からの建物移転の申し入れを拒否しているのであるから、右各建物は法七七条による移転が必要な建築物に該当しないというべきである。

そして証人平川雄之の証言被告代表者佐久間惣治本人尋問によれば、被告の本件区画整理施行地区内の区画形質の変更工事及び公共施設の整備改善の工事は完了していることが認められるので、原告らの従前地に照応する換地を確定することができ、また換地一番二〇、同一番一九、同一番八、同一番一八上の各建物が現状のままでも原告らの各換地の利用に支障はないので、原告郁次郎所有の建物が移転されていないことが、法一〇三条二項、定款六九条に違反することにはならない。

四  土地評価の違法の主張について

1  証人平川雄之の証言及びこれによつて真正に成立したことが認められる乙第二五号証の一、二によれば、原告ら所有の従前地が面していた本件県道及び里道の路線価は、換地細則に基づき適正に算定されていることが認められる。

これに対して原告茂田淳子本人尋問中には、本件県道のうち原告ら所有の従前地に面していた部分の路線価指数が九六〇なのに本件県道とT字路を構成している東西方向の県道が路線価指数一〇〇〇なのは適正ではない旨の供述部分があるが、証人平川雄之の証言によれば、右東西方向の県道は土地区画整理以前の国鉄君津駅と君津町役場(現在君津市役所)を結ぶ路線であつたため路線価指数が高くなつたことが認められ、右路線価指数一〇〇〇に較べ、本件県道の路線価が低過ぎることはない。

2  前掲乙第二一号証によれば、従前地七四一番一(地積九七三・五二平方メートル)のうち七三〇・五二平方メートルについては整地済として一〇パーセントの加算がなされているが、その余の二四三平方メートルについては未整地とされ右加算がなされていないことが認められる。

しかしながら前掲乙第九号証の一、証人平川雄之の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第二八号証、証人平川雄之の証言によれば被告の主張3(一)(2)記載の事実が認められ、右認定に反する原告茂田淳子本人尋問の供述は信用し難い。

そして換地細則三三条は、現況地目が宅地である場合に一〇パーセントの加算をするという規定であるから、登記簿上の地目が宅地であつても一部が埋め立て未了で現況宅地となつていない場合には、その部分につき一〇パーセントの加算をしなくとも右換地細則に違反しない。

3  前掲乙第二一号証、証人平川雄之の証言によれば、従前地七四六番二は、従前地七四六番一と合筆評価のうえ本件県道から二四メートルを超える奥行部分につき盲地逓減率〇・九を乗じて修正していることが認められるが、前掲乙第六号証、証人平川雄之の証言によれば、これは換地細則二四条二項、二七条二項を適用して奥行修正を行つたものであることが認められ、奥行長大な宅地は利用価値が劣るためすべての従前地について奥行修正を適用しているのであるから、右奥行修正をすることに違法はない。

さらに前掲乙第六号証、第二一号証によれば、従前地七四六番一、同七四六番二については、本件県道の正面路線価の外に里道に関して背面道路加算及び角地計算をしていることが認められ、従前地七四六番二が接していた里道についても十分考慮した評価がなされているので、従前地七四六番二の評価は適正である。

4  前掲乙第二一号証によれば従前地七四一番一、同七四四番一につき鉄道修正率を路線価から減点していることが認められるが、前掲乙六号証、証人平川雄之の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第二六号証の一によれば、換地については、路線価を算定する際に鉄道接近係数を減点するという方法を採用していること、これに基づき換地一番八が接する区画整理道路についてマイナス〇・一の鉄道接近数の減点をしていることが認められるので、換地について鉄道への接近を理由とする減額をしていないという違法はない。

五  保留地設定の違法の主張について

1  本案前の主張に対する判断において述べたとおり「保留地設定処分」という行政処分は存在しないが、原告らの保留地に関する主張は、本件換地計画のうちの当該保留地の定めに関する部分についての違法事由が原告らの従前地に対する換地処分の取消事由になるとの主張とも考えられるので、換地計画のうちの保留地の定めに関する部分に違法事由があるか否かについて検討する。

2  別表三1記載の保留地の設定について

(一) 成立に争いのない乙第三二、第三三号証、証人杉浦明の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第一三号証の一、二、証人杉浦明の証言によれば、被告の主張4(一)(1)<2>記載の事実が認められ、右事実によれば、別表三1記載の保留地の設定には法九六条一項及び被告組合定款七条に反する違法はないと解される。

(二) 前掲乙第一三号証の一、二、第三二、第三三号証、証人杉浦明の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第二七、第二八号証、証人杉浦明の証言によれば、被告の主張4(一)(2)記載の事実が認められ、右事実によれば、別表三1記載の保留地の設定には手続上の違法もないと解される。

3  別表三2記載の保留地の設定について

前掲乙第一号証の二、第五号証、証人平川雄之の証言によれば、被告の主張4(二)記載の事実が認められ、右事実によれば別表三2記載の保留地の設定に違法はないと解せられる。

六  訴外高橋両名に対する換地処分について

前掲乙第一号証の一、第三号証、証人平川雄之の証言によつて真正に成立したことが認められる乙第二九、第三〇号証、証人平川雄之の証言によれば、国鉄内房線の北側にあつた従前地七六九番九は面積が三八平方メートルの過少土地なので従前地のみで換地することになれば画地基準に達しないため従前地七六九番一と集合して換地指定したこと、別表三1記載の保留地が設定されたため従前地七六九番一に対し原位置及びその付近に換地指定できなくなつて、右保留地の南側に飛び換地したこと、以上の事実が認められ、右事実によれば、訴外高橋両名に対する別表四記載の換地指定処分に照応の原則違反はない。

これに対し原告茂田淳子は、本人尋問において、従前地七六九番一、同七六九番九はいずれも国鉄内房線の線路のすぐそばにあつたのに被告がそれらに対し線路から離れた角地である換地一二番四を指定したのは訴外高橋両名を不当に有利に扱うものであつて、角地であつた従前地七六九番一に対し角地を換地指定するのであれば別紙図面五の一―一の保留地のあたりに換地を指定すべきであつた旨供述する。しかし前掲乙第二九号証によれば、従前地七六九番一、同七六九番九については、鉄道修正によつて土地の評価が低くされていることが認められ、また右保留地一―一は換地一二番四に較べるとはるかに面積が少ないので、右保留地付近に高橋両名に対する換地を設定すると保留地だけでは賄いきれずに一五―一街区の画地がしわ寄せを受け、原告ら以外の面積の少い画地を他の街区に飛び換地せざるを得ない結果となるのである。従つて原告茂田淳子の右供述によつて、別表四記載の換地指定処分が適法であるとの認定が左右されることはない。

第三予備的請求原因について

主位的請求の趣旨に対する判断四において述べたとおり、原告ら所有の従前地及び換地の評価は適正であるから、別表一、二記載の換地清算金処分はいずれも適法である。

第四結論

以上のとおり、前記却下部分を除く原告らの主位的請求、及び予備的請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 荒井眞治 手島徹 中山幾次郎)

物件目録一~七、別表一~四、図面一~五<省略>

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